ダイヤモンドは、手で触れられる夢のような物質だと思っています。何億年も姿を変えない、小さくてかたい光。けれどその光の足元で何が起きてきたのかを知ったとき、私はジュエリーの仕事をする人間として、目をそらせなくなりました。
掘る、ということ
天然ダイヤモンドは、地中深くの鉱床を掘り進めて採取されます。ひとつの鉱山が開かれると、広大な土地が掘り返され、大量の水とエネルギーが使われます。1カラットの石を得るために、数十トンから数百トンの土砂が動かされるという調査もあります。
鉱山業界も環境負荷の低減に取り組んでいますし、採掘が地域の暮らしを支えている土地もあります。天然ダイヤモンドを悪者にしたいわけではありません。ただ、地球に新しい穴を掘らずにダイヤモンドを手にする方法が生まれた。この事実は、ジュエリーの長い歴史の中でも、とても大きな転換点です。
掘らない、という選択

ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンドが地中で結晶になる環境を技術で再現し、数週間かけて育てられます。化学組成も結晶構造も天然と同じ、正真正銘のダイヤモンドです。詳しくはラボグロウンダイヤモンドとはでご紹介しています。
土地を掘り返さないため、採掘に伴う土壌や水への影響がありません。紛争地域の資金源になるという、ダイヤモンドが長く抱えてきた問題とも構造的に無縁です。
電力という宿題
一方で、ラボグロウンダイヤモンドを育てるには大きな電力が必要です。その電力が化石燃料由来であれば、環境への負担はゼロとは言えません。再生可能エネルギーで育てる生産者は増えていますが、すべてがそうなったわけではありません。
だから私たちは、「ラボグロウンだから無条件にエシカル」という言い方をしません。掘らないという確かな利点と、電力という宿題。その両方を知ったうえで選んでいただきたいのです。けれど、理想はまだ先にあります。技術は毎年進んでいて、この宿題は解かれつつある途中です。
世界の現在地

アメリカでは、婚約指輪に選ばれるダイヤモンドの約半数がすでにラボグロウンになりました。Z世代に限れば、3人に2人が選ぶという調査もあります。環境や人権への配慮を、特別なこだわりではなく当たり前の前提として育った世代が、ジュエリーの選び方を静かに変えつつあります。
日本での認知度は、まだ1割に届きません。ただ、どんな石かを知ったうえでは6割以上の方が好意的に受け止めるという国内調査もあります。知られていないだけで、拒まれているわけではないのです。
新しい鉱山を、掘らない
ANNA DIAMONDでは、石だけでなく地金にも同じ考えを通しています。ジュエリーに使う金やプラチナの多くは、役目を終えた電子機器から回収された、都市鉱山由来のリサイクル地金です。真珠を取り出したあとのあこや貝の貝殻は、砕いて漆喰に生まれ変わらせ、代官山のギャラリーの壁になりました。
新しく掘らない石と、新しく掘らない地金。美しいものを身につける喜びが、どこかの誰かの犠牲の上に成り立たなくてよい時代が、ようやく始まったところです。その選択肢を、いちばん美しいかたちでお渡しすることが私たちの仕事だと考えています。
実物は代官山のギャラリーでご覧いただけます。ご予約は不要です。壁の漆喰に、きらりと光る貝殻のかけらもぜひ探してみてください。



















