#9 流動

#9 流動

ついにお目にかかりました。

その日は、少し屈んで真横から、寝転んで真下から、高い椅子によじ登って真上からと、興奮気味に観察しました。


そう、ANNA DIAMONDの大切なジュエリーを展示する特別な什器が完成したのです。

“什器”という商業的な言葉に閉じ込めてしまうにはあまりにも勿体ないので、これからは「作品」と呼ばせてください。



 

愛の流動性

この作品の起点となったのは、「Fluidity of Love」、愛の流動性をテーマにしたコレクションです。

Fluidity of Love Collection はこちら
 


世間では、変化していく愛の姿を悲劇的に捉えることが多いけれど、私はその変化こそが愛の本質だと考えています。

川になり、海になり、雲になり、雨になる――。

まるで水のように、刻一刻と姿形を変えながらも、そこに存在し続ける愛。


この思想が、ジュエリーだけでなく、ジュエリーを展示するための作品にまで派生しました。


作品の特徴




それはまるで、ぽたぽたと水面に落ちては瞬く間に跳ね上がり、少しずつ形を変える雫のよう。

ベースの形状は、真四角や真円のような単一的なものではなく、ランダムな曲線で描かれたデザインです。

細く美しく伸びる柱の上にはお皿があり、その上にはなだらかな水面のような佇まいのガラスが並びます。


ガラスの循環



実はこのガラス、多摩美術大学の授業で使用された後、通常であれば廃棄されるはずだったもの。

一度火に通され、他の素材と混ざったことで生まれるくすんだ色味が、本物の水のような表情を実現しています。




この作品は、ANNA DIAMONDのイベント等にて、実物をご覧いただけます。

見ているうちに、ぽたぽたと水の音が聞こえてくるかもしれません。

愛の流動性から着想を得た世界でひとつの作品を、ぜひご覧になってください。


ANNA DIAMOND Founder / Designer
森春菜